仮説はどう使う?どう立てる?『仮説思考』読書ノート(後編)

読書ノート

仮説とは何か。仮説思考のメリットとは。

「仮説」の正体、そして仮説思考をするメリットについては、『仮説思考』読書ノート(前編)をお読みいただければ嬉しいです。

大局を描くのが苦手な人へ。『仮説思考』読書ノート(前編)
「大局を描けない」「先を見通すのが苦手」「納期に仕事が間に合わない」…そんな悩みを解決してくれる「仮説思考」。今回は内田和成『仮説思考』の読書ノートを基に、仮説思考の世界を少し覗いてみる。ビジネスパーソンだけでなく、卒論研究前の大学生も必見。前編では「仮説とは何か」「なぜ仮説思考をするのか」について触れました。

仮説思考はどのように使うのか(第2章)

著者によると、仮説思考を使う場面は大きく分けて、問題を①発見する、②解決する、の2つの場面である(p.58)。

問題を発見する…「何が原因で困っているのか」を見つける段階。現状見えていることを寄せ集めて1つの仮説を立て、今手に入る情報(過去のデータ、関係者の発言など)と照らし合わせ、仮説の軌道修正を繰り返す。やればやるほど妥当性が上がる。
問題を解決する…「どうすればうまくいくか」を考える段階。問題の原因を見つけた後、それを解決するために使う。現状だけでなく未来を見通したり、似たような事例を持ってきたり、発想が試されたりする段階かも。

では、実際にどのように仮説を立てていくのか、詳細を見ていこう。

仮説の立て方(1番気になる!)(第3章)

著者の所属するBCG内でのアンケート調査によると、「仮説を思いつく瞬間は人それぞれ」(p.102)らしい。しかし、概してディスカッションやインタビューなど「人との繋がり」の中で生まれやすい傾向にあるようだ。

コロナで普及したテレワークだが、この「人との繋がり」が薄まるところが難点。私は、創造的なアイディアは人との対話で生まれ、人と話すことが自分の視野を強制的に広げると思うのでやはり対面コミュニケーションをする機会がゼロだと生産性が低下する気がする。
仮説を立てるチャネルは大きく分けて「分析結果から立てる」「インタビューから立てる」の2つだ。

分析結果から立てる(p.106)

既に分析されているデータや結果を参照し、仮説を立てる。

仮説を立てるためのデータを集めるために分析した結果」から立てるのではない!それでは、まず枝葉の分析から入る「網羅思考」と同じ。あくまでも既に得られている分析結果から立てる。

〈こちらのグラフ、2009年になると温室効果ガス排出量がガクンと下がっている。このグラフから、温室効果ガスの減少要因について考えられる「仮説」を考えてみよう。〉

⇒私の仮説:2008年リーマンショックに端を発した不況によりエネルギー需要が減り、発電起源のCO2が減った。

引用元:全国地球温暖化防止活動推進センター

インタビューから立てる(p.112)

問題を抱えている当人(クライアント)や、自分の上司・教授・友達から聞いた話を基に、自分の知識と経験を照らして、仮説を立てる。

※その際、漫然とインタビューしない!必ず目的を意識しましょう。
⇒必ずきちんと掘りさげる。「なぜ…なの?」は必ず返すべし。相手の言うこと鵜呑みでは得られるものは少ない(し、偏見が混じっているかも)。相手の発言に質問を返し、より深く発言の意図・背景を理解しようとすること。(仮説の検証を念頭に置けばこの問は自然と出てくるはずだが)

「ひらめく」ためには?(p.126)

自分の見方に閉じこもってしまっていては「ひらめく」ことは難しい。研究でも1人で長いこと論文と向き合っていると、何が正しくて何を書きたくて、しまいにはなんでこの論文を書いているのかもわからなくなってくる。こういった状況を打破するため、著者は「強制的なひらめき」生む3つの方法を紹介している。

  1. 反対側から見る(コペルニクス的転回)
    └売り手⇔買い手、中央⇔現場、自社⇔他社
  2. 考えと反対方向にした時のことを想像してみる
    └「値上げした方がいいかな?」と思ったら、敢えて「値下げしたらどうなるか」考えてみる
  3. ゼロベースで自由に発想してみる
    └現状に囚われないで考えてみる

おわりに

仮説思考、あなたはどう感じただろうか。この『仮説思考』という本はビジネスパーソン向けに書かれた本であることは間違いないのだが、卒論研究前の大学生にもおすすめしたい本である。

本文中では、著者が関わった実際のコンサルティング中の事例が多く紹介されており、非常にわかりやすく仮説思考の有用性が示されている。この読書ノートでは当然全てを紹介しきれていないので、実際に手に取ってみてほしい。

網羅思考にも良さはある

最後に、個人的な意見を1つ。それは「網羅思考にも良さはある」ということ。例えば、網羅思考は「エキスパートになること」に向いている。もしも「将来英語を使う仕事がしたい」という目標が決まっているのであれば、仮説思考(≒逆算思考)で英語の受験勉強をしても意味はない。なぜならば、最低限の努力で目的を達成しようとする仮説(逆算)思考では、受験に出ない点は「寄り道」であり無駄であるため、できるだけ迂回しようとするためだ。そのため、エキスパートを目指すのであれば網羅思考で勉強する必要がある。

お読み下さってありがとうございました!

出典

  • 内田和成『仮説思考』(2006.3, 東洋経済新報社)

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